光る君へ45回はばたきあらすじネタバレ〜まひろの語り
私の物語はついに、その終わりを迎えようとしていた。
幾夜も幾夜も重ねて紡いできた言葉たち。光源氏という一人の男の生涯を通して描き出そうとした、この世の理(ことわり)と人の心の機微。それは同時に、私自身の人生の軌跡でもあった。
「宮仕えをしたい」
賢子の言葉は、まるで遠い昔の私自身の声のように響いた。彰子様に仕える道を示唆した時、娘の瞳に映った希望の光は、かつての私のものと同じだったのかもしれない。
そう、今こそ旅立つ時。長年温めてきた夢を叶える時が来たのだと、私の心は確かに告げていた。しかし―
「まひろ、それは許されぬ」
道長様の声には、いつもの威厳の下に、何か痛ましいものが潜んでいた。私たちの間に流れる時は、これほどまでに深い溝を刻んでいたのだろうか。
ついに私は決意した。あの日から守り続けてきた秘密を、賢子に明かすことを。この娘の人生に、私の過去という影を永遠に落とし続けることは出来ない。彼女には彼女自身の物語がある。それは私が紡いできた物語とは、また違う輝きを放つはずだから。
砂浜を駆ける私の足取りは、不思議なほどに軽かった。潮風が頬を撫で、着物の裾が風に舞う。遠くには、思いがけない再会が待っているという。
そして道長様は、出家を決意されたという。私たちはそれぞれの道を、それぞれの覚悟を持って進んでいく。それは哀しいことではなく、むしろ美しい。なぜなら、これもまた物語。私たちが生きた証となる、かけがえのない物語なのだから。
源氏物語を書き終えた今、私はようやく自由になれる。しかし同時に、この物語に込めた想いは、永遠に私の心の中で生き続けるだろう。それは苦しみであり、喜びであり、そして何より―愛なのだから。
光る君へ45回はばたきあらすじネタバレ〜道長の語り
月影が庭を照らす夜に、私は独り座していた。
まひろが旅立つという。あの女が、この宮中から去るというのだ。源氏の物語を書き終え、今や己の夢を追いたいと。そんな理由で、簡単に去られては困る。困るのだ。
「まひろ、それは許されぬ」
口から零れた言葉は、いつもの威厳に満ちた調子を装っていたが、私自身、その声が僅かに震えているのを感じていた。なぜ今になって、こんな我が儘を。しかし、それは私自身への問いかけだったのかもしれない。
賢子への秘密を明かすというまひろ。あの子の出生の真実を語るという。それもまた、私には堪え難い。まひろと私とが共有してきた秘密の数々。それらは誰にも触れられることなく、私たちの間だけのものとして在り続けるべきではなかったのか。
しかし、まひろの瞳に映る決意の色は、かつて私が彼女に魅了された時と同じく、揺るぎないものだった。あの頃、才知に満ちた歌を詠み、誰よりも鋭く世を見つめていた女。今もその眼差しは変わらない。
出家。そう、私はその決意を固めた。この世の栄華を極め、望みのすべてを手に入れた今、残されたものは何だろう。まひろが去り、彰子も太皇太后として新たな道を歩み始める。私の時代は、確かに終わりを告げようとしているのだ。
まひろの源氏物語は、この世の無常と人の心の機微を見事に描き出した。そして今、私たちもまたその物語の登場人物のように、それぞれの道を選ぼうとしている。
私の心の奥底では、まだ何かが呻いている。まひろを引き留めたいという我が儘な想い。しかし、もはやそれは叶わぬ夢なのだ。私たちは互いを照らし合い、高め合い、そして今―離れゆく。
これもまた、運命の巡りなのだろうか。まひろが紡いだ物語のように、私たちの人生もまた、完成に向かって動き出している。ただ、この胸の内に残る想いだけは、誰にも語ることはできない。
月は依然として庭を照らし、夜は静かに更けていく。私の心もまた、静かに、しかし確かに、新たな境地へと向かっているのだ。